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■酔田振男の酔いどれ前のひとりごと■

〜『酔いどれオマージュ』をなんとなく書いた男の、ちょっとだけマジメなひとりごと…〜

vol.57 カッコ悪くてカッコいい


 全然打ってこないんだよ、いやあ弱ったなあ、これどうしようかなあと思って、それくらい相手はおれと揉みあいたくないの。困ったなあ、よし、相手はチャンピオンだ、これを怒らせちゃおうと思ってよ、それで、カエル跳びっていうんだけど、あれをパッとやってね、ポーンといったら、なんかこのへんずるずるって当ったの。

 まともには当らなくても、「こんなことをおれの前でやりやがってこのバカたれがっ」、てゆう感じだよね、そーんで相手が打ってくるんだよ、ほいで揉みあいになって打ちあいになって、おれが1ポイント勝ったんだよ。

 でもね、も1回やれば勝てるんじゃないかなって思ってさ、女房とね、一応、もうやめるからよって。だけどもよ、勝てるって気持があるからよ、よーし、やるって言ったら、女房がね、「お父さん、やんないって言いましたよ、今度やるんだったら出ていきますからね」って言うんだよ。

 おれ、びっくりしてよ、なに言ってんだよこの野郎、おれの宝もんだからあの野郎、でへへ、出ていかれたら困っちゃうよ、ほんで分ったとは言ったけども、試合キャンセルになっちゃうからね、だから、やるーぅって言った、『出ていくーぅ』って、おー、出ていけって、かっこいいね、出ていけーって、へへへ。

 出てけこの野郎、そしたら、じーっと目ぇ見るんだよ、笑うんだよ、とほほ、どしたの、『お父さんのことだから、やるったらやる人だからやると思ったけど、なんとか阻止しようと思ったんだけどだめなのね』って言やがるの。早く言えこの野郎、やっぱりおれのことを考えてくれる女房だからだよね、でへへ。

* * * * *

 輪島功一さん、あなたほどカッコ悪くてカッコよくて、驕らないボクサーを僕は知りません。

[2004/11/10 記]



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