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■酔田振男の酔いどれ前のひとりごと■

〜『酔いどれオマージュ』をなんとなく書いた男の、ちょっとだけマジメなひとりごと…〜

vol.52 罠


 20年もボクシングをやってきた、いわゆるロートルってやつが主人公で、こいつが若くて無敗のボクサーと最後の試合をする。ロートルには恋人がいる。もうボクシングなんかやめてくれと哀願するが、これが最後だ、必ず勝つから観にきてくれとチケットを手渡して試合会場へ向かう。恋人は会場へ足を運ぶものの、憂いで中へは入れず、夜の街をさまよい、手にしたチケットを橋の上からちぎって棄てて涙する。

 ロッカールームでは不安定な感情のボクサーたちの入れ替わり立ち替わりがあって、その中でひとり平静な主人公はシューズのひもを締めたりバンデージを巻いたりして、ラスト・マッチに備える。

 いよいよ出番。リングに上がった主人公はそれとなく恋人の席を見る。そこだけが空席で、だからといって落胆はしない。

 ゴングが鳴って乱打戦がはじまる。1R、2R、主人公はダウンしても立ち上がって果敢に攻めるが、若さと勢いの前にKO寸前に追い込まれる。

 3R、主人公が盛り返すがクリンチの際、相手ボクサーが「裏切者」とつぶやく。コーナーに戻った主人公はセコンドにたずねる。そこで初めて仕組まれた試合だったことを知る。主人公だけが八百長を知らされず、というのも味方陣営ですら本人に教えずとも負けるだろうと考えていたからで、それが意外に頑張っちゃったもんだから、段取りがおかしくなって、客席で見守る暗黒街の連中も厳しい視線をリングに向ける。

 1949年製作のアメリカ映画の邦題、原題は『ザ・セット・アップ』。

 ご存じの方もいるでしょうが、試合のシーンというのは今も昔も変わらないようで、いかにも作りものって感じがしてしまうけれど、時間の後戻りのない、単純明快なストーリーは見ていてラクだし、互いの陣営が密約をかわす場面の後ろにはこれまた古典的なUFOキャッチャーなんかが配されていて妙に嬉しかった。

 うひひ。

[2004/09/15 記]



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