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■酔田振男の酔いどれ前のひとりごと■

〜『酔いどれオマージュ』をなんとなく書いた男の、ちょっとだけマジメなひとりごと…〜

vol.46 安らかに眠りたい


 ねずみが出ましてね。

 ここ半年ばかり、毎日のようにDVDへ昔のテープをダビングしてるんですが、その晩も、夜中の3時ですよ、ちょうど10年前にあった渡辺二郎とカオサイ・ギャラクシーのエキジビションマッチを録ってたんです…。

 渡辺がタイのパヤオ・プーンタラットとジュニア・バンタムの統一戦をやって、ま、パヤオとの一戦に臨んだ瞬間、渡辺は保持するタイトルを剥奪されましたから、記録上は統一戦にはなりませんでしたが、その剥奪されて空位になった王座についたのがカオサイで、彼はそのまま引退までずっとジュニア・バンタムで19度も防衛しましたね。アジアの誇りですよ。

 渡辺とカオサイ、どっちが強いか。ぜひとも実現してほしかったファイトでしたけどね。出るカオサイに、さばく渡辺。序盤でカオサイのパンチがまともに当ったら、そこであっけなく終わるかもしれない。渡辺はカオサイの前進をしのいできたものの、中盤あたりでつかまるかもしれない。そこを越えられたら、単発ではあったがこつこつ当ててきたパンチの効果がでてきて、今度はカオサイがぐらつくシーンが見られるかもしれない。

 観客は立ち上がって声援をおくる。ここぞとばかりに渡辺はラッシュする。しかしカオサイのタフネスは無類で、フックをひっかけて態勢を入れ替える。一度クリンチして、カオサイは傾いた流れをとめようとする。失いかけたリズムを取り戻さんと足を使い、しばし時間をかせぐ。ここで渡辺が決められなければ判定へ。それじゃ心もとないと、渡辺は詰めにはいる。そこへカオサイの右がカウンターでヒット、渡辺痛恨のダウン。それじゃ渡辺に気の毒か。はじめから渡辺がカオサイを見切ってボックスして、終盤連打を見舞い、決定的なポイントを取り判定勝ち。この線もありうる。

 そんなことを思いながら、1ラウンド2分で3ラウンドのエキジビションを眺めて、そのあと渡辺の饒舌なインタビューを聞いて、そしたら目のはしに黒っぽいものがうごめいたようで、そちらを見やると、そこに子ねずみですよ。

 ソファの下から這い出してきていて、はじめは大きな虫だなあ、なんてね、カブトムシにしてはちょっと黒すぎるなあと、視力も年々落ちてきてますからね、テレビの字幕なんて少し離れたら読めませんから、まあ見えなくても支障ないならいいかと、外を歩いていても向こうからきれいな女性が来てもわからないから、そのほうがいっそいいかもしれないと、ふだんは眼鏡かけませんからね。

 目を凝らしたらやっぱりねずみですよ。正直ぎょっとしました。立ち上がったらソファの下へもぐりこんでしまって、それでまた腰をおろしてしばらく待つと、また出てきて、もごもごやっているんですよ。これからここで布団敷いて寝るのに参ったなあと。

 翌日、薬を買ってきて、あのゴキブリホイホイ式の、餌でおびき寄せて粘着糊で捕獲するやつ、それで次の日に捕まえましたが、まだきっといっぱいいるんじゃないかと、落ち着かない夜が続いているんです。

[2004/07/14 記]



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