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「世界戦出場13回、強かったのはベツリオ・ゴンザレス、巧かったのはミゲル・カント」
即答されたのは元世界フライ級チャンプ小熊正二、現小熊ボクシングジム会長。
まさか会えるなんて思いもしなかったので下準備もなかった。思いつくまま記憶をたどって、アントニオ・アベラル戦のことを訊いた。
6Rまで膠着状態だったのが7Rにはいって、突然チャンピオンがラッシュした。捨て身の攻撃に見えた。打ち合いのさなか、挑戦者アベラルのたぶん右パンチがカウンターになって炸裂、王者はばったり倒れて、あっというまに勝敗は決した。
「あのときなぜ攻勢をかけたんですか」
「右がはいって、相手のひざがかくっとなったのがわかったんだ、チャンスだからね、だから行ったんだ。空いたところへいいのを貰っちゃった」
そうだったか。まるで気づかなかった。積年の疑問がはれた、と言いたいが、あなたは無限川坂さんは一発のパンチはないと書かれていますが、とんでもない誤りで、自分が受けたパンチの中で一番強かったのは川坂さんだった、と元ボクサーの方からお叱りをうけたばかりだったこともあり、全然見る目がないことに恥じ入った。
それにしてもなあ、持っていった『あしたのボクシング』を小熊さんはぱらぱらめくっていたけど、ボディ・ブロー特集にその名がないのは、ちと具合が悪かった(原功さんが少し触れてはいたけど…)。戒厳令下の韓国・ソウルで朴賛希をボディでKOに屠り、5年半振りの戴冠を成しえた試合は、数ある日本人世界戦の中でも鮮やかな印象を残す。
腹を打って世界を射止めた日本人チャンプがどれだけいるか、まして敵地、それを想えば、いろいろ事情があったにせよ、やっぱり登場してほしかったなあ。
「ボディ打ちはおれがいちばんうまい」
そう仰っていました。
右ストレートをのばした形で、
「相手がこう打った、そのときここ(右脇腹)に打ち込むんだ、これが効くんだ」
「そうですよね、息を吐き出したところへパンチを打てば堪えますよね。ボクシングに限りませんけど、ワザをかけるときは相手の呼吸を読みますよね」
バツの悪さをごまかすために耳学問で応えたけれど、そのあと興味尽きない話をいくつか聞いた。
「また来て」
そう言ってくださったけれど、いいのかなあ、自分の都合に合わせて相手の言葉をそのまま受けたり、裏を読んだりする癖があるんだが、こんどはそれなりに準備して伺うぞ、なんてジムの階段をおりながら決めてしまった。
[2004/06/02 記]