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■酔田振男の酔いどれ前のひとりごと■

〜『酔いどれオマージュ』をなんとなく書いた男の、ちょっとだけマジメなひとりごと…〜

vol.34 年間最高試合について


 夜の9時半ごろ、電話があった。

「相模原の○○ですけど、なんですか、きょうの試合、おかしいでしょう? どう見たって□□の勝ちじゃないですか、絶対おかしいよ」

 名乗ってはくれたけれど、知りあいではない。

「おれ、スナックやってるんだけど、いま店から掛けてるんだけどね、おかしいよね、なんなんだ、ありゃ、え、そうでしょ、ジャッジはいったい何を見てるんだ、あ、そうだろ」

 電話の向こうから、なるほどそれらしい雰囲気が伝わってくる。アルコールも手伝ったか、不満氏は喧嘩腰でまくし立てる。

 掛け間違いじゃないですかというところだが、事はボクシングである。見ず知らずの人の話を適当に相槌打ちながら聞いていた。そのうち、ぽーんと話が飛んで、年間最高試合のことを言い出した。輪島vsアルバラードがなぜ選出されなかったのか納得がいかないと言う。

「ああ、あの試合ね」

 落ち着いた風で応えたが、古い試合でたぶん再戦の方だと思うが、実はあれ見てないんだよね。後年ビデオで見たけれど、試合当日はほっつき歩いていて家にいなかった。翌日学校でそれなりの友人に本当に輪島が勝っていたかと確かめたことを思い出していた。不満氏はまだ何やら喋っていたが、きっと輪島のファンなんだなあ、その時に見ないと年間最高試合云々は言えないよなあ…そんなことをぼんやり思った、と思う。

 輪島功一といえば柳済斗との再戦が長年引っかかっていた。アリvsフォアマンに近いショックがあった。なぜ輪島は勝ったのか。駆け引きだ根性だと、言ってしまえば簡単だが、今でも時たま繰り返す、なぜ輪島は勝ったのか。

 不満氏は輪島vs柳については触れなかったが、この試合も年間最高試合には選ばれていない。この年は具志堅vsグスマンがあったし、年内に輪島は敗れてしまったこともあって選に漏れたのかもしれない。

 不満氏からはその後音沙汰はない。10年も前の珍事。してみると、あの電話はやっぱり間違いだったんじゃないだろか。

[2004/04/07 記]



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