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■酔田振男の酔いどれ前のひとりごと■

〜『酔いどれオマージュ』をなんとなく書いた男の、ちょっとだけマジメなひとりごと…〜

vol.31 これぞ伝説


 串木野純也vsカーロス・エリオット、伝説の一番であります。

 昭和59年7月30日、昭和59年は1984年です。日本ウエルター級タイトルマッチ、チャンピオン串木野12度目の防衛戦。両者の経歴は知ってる人は知ってるし、知らなくて興味ある方は調べてください。戦況は、もう手許にはありませんが、その年の『ボクシング・マガジン』8月号か9月号のカラーページで紹介されているはずです。

 暑い盛り、愉しみにしていたのに関東地区の放送はありませんでした。関西、中部でも放送があったかどうか今もってわかりません。翌日の新聞で6ラウンドKOで防衛という結果を知っただけでした。それからずっとフィルムを探していました。とは言うもののツテもアテもあるわけはなく、諦めるともなく諦めかけていましたが、10年くらい前だったでしょうか、知り合ってまもない鈴木さんという方にダメモトでお願いしました。

 そんなに時間をおかずに届きました。ひとりきりでも、うわぁーって声が出てしまうときがありますが、あのビデオテープを見たときがそうでした。うろ覚えですが、あのテープ、たしか内容を知らせるメモがなく、何が入っているんだろうとなにげなくセットして、そうしたらテレビの映像ではなくて、素人のビデオ撮りでした。ジム関係者かファンが撮影したもののようでした。

 入場シーンからあって、見ているうちに、え、う、お、い、あ、なんて、あいうえおがめちゃめちゃになりました。

 挑戦者有利の予想通りエリオットはフック、アッパーで前へ出ます。5R終了間際、右アッパーがチャンピオンの顎に炸裂しました。6R、挑戦者はアッパーを多用して決めにいきます。がらあきになった頭部に今度は王者の右がヒット。よろけたところへ左右パンチが追撃して、挑戦者はたまらずロープへ歩みよって、最後はベランダに干した布団のようにロープを支点にして二つ折になってしまいました。このあと、撮影者の興奮する声が入り、映像も乱れました。

 記事には逆転の二文字があると思いますが、フィルムを見るかぎり不思議にその印象はありませんでした。

 外国のスター選手の影響でしょうか、パフォーマンスは派手でもゴングが鳴ると途端につまらなくなってしまう選手がいますが、ああいうのはなんとかならないものでしょうか。串木野選手は地味で、たぶんブキッチョなボクサーですが、強い人は何もしなくても華やかにうつるもので、惹かれるものがありました。冗談を言ってもそれがちゃんとわかって、さりとて声をあげて笑うのではなく、ふと見るとにやにや笑っている、そんな人ではないかと想像しています。

 申し遅れましたが、『あしたのボクシング』で巻頭を飾る一文を書かれたのが鈴木さんです。鈴木さんのおかげでわたくしのボクシング道楽は、ちっぽけですが、ふくらみを持つことになってしまいました。

 本来の意味とは違いますが、上の文から伝説の条件とは何か、10項目以上正しく列挙できた方は、白夜書房さんは無理かもしれませんが、そこそこの会社に就職できます。事業を起こすのも可です。

 …なこたぁねぇか。

[2004/03/10 記]



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