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■酔田振男の酔いどれ前のひとりごと■

〜『酔いどれオマージュ』をなんとなく書いた男の、ちょっとだけマジメなひとりごと…〜

vol.29 リングに吠える


 或る日のリングサイド。観戦していた一階級下のチャンピオン、アレクシス・アルゲリョが立ち上がって握手を求めたが、無視して花道をひきあげた。

「お前なんか相手にしていない、眼中にない、目障りだ、握手なんかするいわれはないぞ」

 所かわって、雨のモントリオール。夢の超特急シュガー・レイ・レナードを止めた。ごったがえすリング上で、戦いおえたレナードに食ってかかり雄叫びをあげた。

「見たか小僧、勝ったのはおれだ、おれが勝ったんだよ! どっちが強いかわかったろ、おれだよ、勝ったのはおれなんだよ!」

 時うつって、怪童ウィルフレド・ベニテスに挑戦。試合終了のゴングに両手を差し出し歩み寄るベニテス。

「寄るな触るな! お前なんかと抱き合いたくない。寄って来るなって言ってるだろ、いやだいやだ、お前なんか顔も見たくない!」

 学校の先生がこれらの光景を見たら怒るだろうねぇ。

「なんて行儀の悪い子なんでしょ。デュラン君、廊下に立っていなさい」

 それでも、つれなくされた連中はずっとデュラン君が好きだった。皆おとなしく教室で教科書をひろげてはいたけれど、廊下に立たされたデュラン君を気に掛けていた。

 廊下のデュラン君がどんな顔をしていたか、誰も知らない。

[2004/02/25 記]



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