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ミニチュワシュナウザーという種で、生まれたてを知り合いが購入したが、面倒みきれなくなり、預かって丸2年以上たつ。
家の中に入れている。朝晩散歩に連れ出して、糞の始末をする。雨降りや具合が悪いとき、時間に追われているとき、こんな億劫なことはない。
世はペットブームで、ブームというのはたいてい女性の産物だから、犬を飼っていると言えば、関心をしめす人がわりあいにいて、ついでに飼主への警戒心もゆるむようで、女性と接しやすくなったのは功名だと思う。連れ歩いていると、見ず知らずのお嬢さんに目顔で挨拶されることがある。ほんとはおばさんが多いんだが。
尻尾を振るとか遠吠えとか、飼ってみて、なるほどなあと分かる。
ずいぶん前のことだが、浪速のロッキーこと赤井英和は大和田正春によもやの敗北を喫した。ブルース・カリーに玉砕したとはいえ、手応えを感じとっていた赤井陣営は、世界しか見ていなかった。大和田との一戦は、世界戦への小手調べ、あるいは景気づけ程度の試合のはずだった。
大和田は巧さもパンチもあるが、チキン・ハートでグラス・ジョー。赤井相手では、所詮、咬ませ犬にすぎないことは衆目の一致するところだったと思う。
それが、あろうことか赤井のノックアウト負け。しかも脳内出血で意識不明の重体。2度目の世界戦を見据えていた浪速のロッキーのボクサー生命は、ここで唐突に終る。
かたや大和田は赤井戦を弾みに、日本チャンプへと駆け上がり、絵にかいたようなサクセス・ストーリーを見せた。ライターにとっては恰好の題材で、本にもなった。でもなあ…。犬を飼ったせいか、年のせいか、ボクサーを犬にたとえることに今ではためらいがある。
赤井英和は、それから俳優に転身して成功をおさめ、こちらもひとまわり大きなサクセス・ストーリーを作りつつある。不思議なもんだなあ。昏倒している赤井のかたわらで、エディ・タウンゼントはワン・モア・チャンスと祈った、その神様がどこかにいるような気になるなあ。もうひとつ、生死の境をさ迷い、還ってもまだボクサーであることを信じ込もうとしていたころ、たぶん触れてはいけないことだが、赤井のそばにいた女性はその後どうしているのか。この役者が過去を語るのを見たときふと思いだした。
日常の些事を語るふりで、つまらぬことのかさね書き、赦されたし。
それにしても、赤井英和が人気ボクサーだったことを知る人は少ないなんて、今夏、話題になった火星くらいに、ちょっとした驚きだ。火星は今でも光っているが、柄にもなく夜空を仰ぐ習性ができたのは、夜の散歩は深夜が多いからだ。実は、奴がおしっこやウンチをしているとき、退屈なだけなんだが。
今夜もまた奴とふたり、ご近所を徘徊して星を眺めることになる。
まあ、いろいろあるさ。
[2004/01/14 記]