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タイトル奪取はプエリトルコ、サンファン。
野天のリングで、王者ラファエル・リモンの動きだけがスローモーションで流れていた。君は王者を翻弄し、その豹柄のトランクスは青空に映えていた。立っている世界がはなから違っていた。ついでに、リチャード・スティールも若かった。
新しいスターの誕生に業界も沸き立ったが、このあと、君がみるみる失速して色褪せてゆくことを誰が予測しただろう。ヘクター・マッチョ・カマチョのアナウンスが白々しく聞こえるようになった。打たれないボクシングに徹して、大負けすることなく、選手寿命は永らえたが、誰と拳を交えたかというだけで、記憶に残る試合はついになかった。
なぜリングに上がるんだろうと、そのキャリアの後半から、君を見るたび、ぼんやり思うようになった。
どこかで臆病風が吹きはじめて、以後、ぬかりないボクシングスタイルの確立に励んだのか。
日々増大するマス・メディアの思わくを上手に利用することに腐心してきたのか。マッチョ思想なるものをわたしが曲解しているだけなのか。色褪せたなんて思うのはわたしだけで、ずっと君は輝きつづけていたのか。もう一度言う。君は速かった。パンチも出入りも速かった。
そして落日も早かった。残照ばかりが長く霞んでいる。
誰か、カマチョのファン、ボクシング狂の人、誰でもいい。
怒鳴ってくれ。
お前の目は節穴か、お前はいったいどこをどう見てきたんだ、これを見ろ、あれを見ろ、こんなにカマチョは素晴らしいじゃないか。
初めて君を目にしたとき、ローラースケートを履いてリングにあがっているんじゃないか、思わず君のあしもとを確認したよ。
[2003/12/17 記]