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■酔田振男の酔いどれ前のひとりごと■

〜『酔いどれオマージュ』をなんとなく書いた男の、ちょっとだけマジメなひとりごと…〜

vol.20 鮮烈のリング


 開始20秒、王者の右ショートストレートが顔面にヒット。リング中央、挑戦者はすとんと尻餅をつく。立ち上がったところへ左フック右ストレートのコンビネーションで追撃。挑戦者もさがりながら手を出すが、当たらない。

 2ラウンドも一方的な展開。開始50秒、ロープにつめたところで王者の右オーバーハンドがテンプルに炸裂。なぎ倒されて、挑戦者またも腰から落ちて、リング上に足を投げ出す恰好でカウントを聞く。立ち上がったが1ラウンド同様、王者の猛攻にさらされる。

 はじめ間違いかと思った。届いたビデオテープには挑戦者の4ラウンドKO勝ちになっている。勝者と敗者をとりちがえているんじゃないか…。

 WBC世界ライト級タイトルマッチ。

 王者は無敗のハードヒッター、エドウィン・ロサリオ。挑戦者はホセ・ルイス・ラミレス。かつて、あのアルゲリョからダウンを奪い株をあげた、粘っこいファイトが身上のメキシカン。印象は地味だが、戦績は84勝70KO4敗。その中の1敗が前年の王座決定戦でロサリオに判定で敗れたもの。

 今ふうにいうとリベンジなるかってところだが、満を持した世界戦で、出だしこんなだったら、立て直せないよ、ふつうは。

 ダニー・ロペスや大場政夫の逆転勝利は知っているけど、なんせ相手が悪い。とぶ鳥落とす勢いの王者はここまで24勝21KO。のちにチャベスにベストファイトを献上し、平仲明信に戴冠をゆるしたけれども、小刻みな直線で構成されたユニークなボクシングは、20センチ30センチの距離があれば、その空間をシャープに打ち抜いて、一打必倒のKO劇を生みだす魅力があった。

 注目選手の一人だったなあ。

 様相が変じたのは3ラウンド1分過ぎ。挑戦者の休みないパンチが王者をとらえる。ニュートラルコーナーまで追い込んで、あわやダウンかと思わせる激しい連打。そして戦慄のラストシーンがやってくる。

 4ラウンド終盤、コーナー近くでロープを背負った王者に、挑戦者の左ストレートが、何て言うのかな、やわらかく、みぞおちに吸い込まれた。何かを感じたんだろう、これが引き金で、挑戦者はしゃにむにパンチを浴びせる。その数40連発。コーナーに詰まった王者は行き場を失い、クリンチすることもダウンすることもできない。雨あられの砲撃をうけて、とうに目は死んでいる。朦朧とした意識で、それが相手と思い込んだのか、最後はコーナーポストへ抱きついた。その王者の左腕をかいくぐって、挑戦者は背後にまわりこみ、なおも乱打しようとしたところで、レフリーが割って入った。

 終わってみれば、攻守が等分に配された、コントラストの強い試合だった。

 こんな試合を見たら、あなたもボクシングにはまると思うけどな。

[2003/12/10 記]



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