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■酔田振男の酔いどれ前のひとりごと■

〜『酔いどれオマージュ』をなんとなく書いた男の、ちょっとだけマジメなひとりごと…〜

vol.16 ないものねだり


 問題。日本人の世界チャンプで他界した人はだれ?

 唐突な書き出しだなあ。失礼。

 日本人の世界チャンプは何人だとか、日本のジム所属も含めたら何人だとか、海外で奪ったのは、とか、年鑑やよそのホームページを覗けばわかるけれども、記録への執着が薄れたなあ。何度防衛しようが、いくつタイトル奪ろうが、どうでもよくなってきたなあ。

 収集の趣味や道楽はじめると、継続するの大変だ。といって始まったら、なかなか終りにできない。途中でやめたら、悔いが残ることが多い。

 まあいいや。長い間、心にかかっていることのひとつが、その他界したチャンプの試合が見たいということ。

 今いちばん見たい日本人選手は誰ですか、という質問があったら、もう20年も前から答が同じなんだよなあ。ふたつみっつはビデオ化されているけれど、物足りない。大試合じゃなくてもいい、とにかく彼のボクシングを見たい。彼が一番ということじゃない。優劣じゃなくて嗜好の問題、またはビデオ化されないがゆえの、ないものねだり。

 引退してからのテレビ解説では、選手のことを終始、君付けで呼んでいたのが印象に残る。西城君、花形君、大熊君…、そのトーンがなんだか耳に心地よかったなあ。亡くなって、どれくらいたつんだろう。

 えーと、たぶんね、彼は、たしか、池袋界隈の不良少年だった。不良ったって、そこらのあんちゃんみたいに、まず群れて、気が大きくなって、頓狂に騒いで、からいばりして、あげくメソメソするような、そんなんじゃなかった、と思うよ。でなかったら世界なんて奪れっこないもの。いちばん根性があった選手とエディ・タウンゼントが誉めていたなあ。

 彼にならって、なあんてことはなかったんだけど、血気盛んなころ、用もないのに、池袋の歓楽街に出向いて(カネないから昼間)、しらけた通りを歩いていたら、向こうから中年のおやじがきて、すれちがいざま、ニヤッと笑って左ボディを入れてきた、軽くね。反撃なんてしない。こちらもニヤッと笑ってやり過ごしたけれど、あれって何かの挨拶だったのかなあ。

 ジョー小泉氏がテレビ各局を奔走して、かなりの数の試合をビデオ化してくれたけれど、急がないとテレビ局は過去の試合を消し去っていると、当時(いつだっけ…?)書いていた。今じゃすっかり消え失せちまってるかもね。

 今後あらたに彼の試合を見ることは…、あー、無理かなあ。

 繰り返すよ。

 問題。彼って、だれ?

[2003/11/12 記]



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