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目前の出来事に対して、はて、これは以前にどこかで経験があるぞってな、錯覚のことです。いつだったか、C級ボクサーさんも日記で触れていましたね。
この既視感を使って、男が女に近づくときに、どっかで会ったことなかったっけ、なんて白々しく言い寄ったりします。“おれおれ詐欺”なんてのもこのたぐいです。
また古い話ですが、1982年6月、白人ホープ、ゲリー・クーニーはラリー・ホームズに挑戦、13回KO負けしました。
テレビで見ていて、そのラスト・シーンに既視感を覚えたものです。ホームズのパンチを浴びたクーニーは力尽き、ロープづたいに崩れていきました。
似たようなシーンを見たぞ…。
時は1975年3月。モハメド・アリ vs チャック・ウエップナー。
俳優シルベスタ・スタローンに転機をもたらした試合です。
フォアマンに勝ったアリ陣営が最初の防衛戦として選んだラクな相手、それがウエップナーでした。
とうが立ったこの白人ボクサーは、陣営の目算通り、恐い相手ではありませんでした。これといったパンチもなく、序盤からクリンチのたびにアリの後頭部を打ってばかりいました。アリは反則打をレフリーにアピールし、レフリーも再三注意をしました。それでもやめず、怒ったアリがお返しに後頭部を打つという、子どもじみたシーンが繰り返されて、ラウンドが過ぎてゆきました。
その間にもアリは的確なパンチを数多く打ち込んで、もはや勝敗は決したも同然の展開でした。それでも挑戦者は倒れませんでした。顔は腫れ、おそらく顔面のそこかしこに出血が見られたはずです。
とうとう最終15回まできました。
VTRは持ち合わせていないので、話半分できいてください。
アリは攻撃の手をゆるめず、ウエップナーも後退をはばかり、とにかくパンチを出す。きっかけは何だったか、さすがに一歩二歩さがった挑戦者はアリの連打になすすべなく、ロープづたいに崩れてゆきました。もはや脚がいうことをきかず、上半身だけが左にかしいで、ちょうど木が切り倒されていくような形で、横倒しにゆるやかに落ちていきました。なんだか、はっとしましたね。
ここから先はとってつけた話になりますが、その後の情報で、挑戦者はどうも、勝つ一念で試合にのぞんだようです。チャレンジが決まったときから、味方であるべき者からもバカにされたり、クサされたりしたようですが、当人だけは大真面目で勝つ気でいたようです。
当人の思いを愚かとわらうのは簡単ですが、倒れていく姿を見たときに、はっとしたのは、本気で勝ちにきていたことがはじめてわかったからでしょうか。
モハメド・アリへの挑戦、それだけでも名誉なこと、倒れずに終れば、敗れても賞賛される、そんないじけた、みみっちい思わくは当人にはなかった。これがシルベスタ・スタローンを揺さぶったんじゃないかと思っています。
[2003/10/08 記]