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しかし案外これがむずかしい。ピタリとはまる異名は少ない。
最もポピュラーなのは「石の拳」だろう。ロベルト・デュランがああいう凄いボクサーになったから、なおさら石の拳という呼び名に含蓄がでた。殊に「石」という形容。鉄とかダイヤとか、石よりも強いものにしてもよさそうだけど、「石の拳」の石は、鉄やダイヤでも砕くことのできない特別な石、という響きをかもしだしている。
「褐色の爆撃機」、「ロープ際の魔術師」、このあたりはよく出来ていると思う。「スーパーエキスプレス」なんてのもかっこいいね。レナードのむこうをはって、ちょっとの間だけだったけど、日本でも「オリエンタル・エキスプレス」と呼ばれた選手がいた(誰だかわかる?)。
「スモーキング・ジョー」ってのもいい。「モンテキーヤ」ってのも好きだ。「黄金のバンタム」は面白い異名で、1人の選手のものではなくなって、異名自体がひとり歩きをしている。
これらに比べて、マービン・ハグラーをいまだに「ボストンの稲妻」で片付けるのは失礼じゃないか。モハメド・アリが「グレーテスト」なら、ハグラーは「マーベラス」だけでいいはず。
目を日本に転じると、正直言って、見劣りする。
「カンムリワシ」、「カミソリパンチ」、「ハンマーパンチ」、「炎の男」、「幻の右」…いろいろあるが、もうひとつぴんとこない。ファイティング原田が「狂った風車」とアメリカで紹介されたと知って、ちょっと面白いと思った。「和製アルゲリョ」と、これもつかのま呼ばれた選手もいた(これも誰だかわかる?)。
ニックネームって、当然のことなんだけど、人々の思いが注入されてるよね。感心するものは、特に強い思いを感じるし、想像をかきたてられる。
しまいにもうひとつ。
いちばん気にいったニックネーム、「ヒットマン」。
ピタリとはまった感じだった。“正鵠を射る”という難しい文句があるが、まさにどんぴしゃだった。ピピノ・クエバスをあっさり料理した試合なんか、入場のシーンからして、ヒットマン以外の何者でもないっていう雰囲気を漂わせていた。
レナード戦で、はじめてヒットマンは、その引き金をひくのをなぜか一瞬ためらったけれど。
[2003/10/01 記]