トップ通販案内編集部より
EDITORS report〜編集取材記〜
Web連載掲示板ど忘れ確認用! 資料編MAIL
ボクシングジムLINKボクシング情報LINKその他LINK
■酔田振男の酔いどれ前のひとりごと■

〜『酔いどれオマージュ』をなんとなく書いた男の、ちょっとだけマジメなひとりごと…〜

vol.10 強がり


 移動の手段はバイク。嵐の晩だってへいちゃら。

 街にクルマをだしたって、いらつくのが関の山。気をひこうって女もいない、青さもない。電車やバスは乗りつけないと、いたづらに疲れる。満員だと人相悪いから痴漢なんぞにでっちあげられる危険大。

 ここニ十年は愛称カブ、蔑称トツバイのホンダスーパーカブ。スクーターとはエンジンがちがう。寿命長いし、すり抜け、寄り道に最適。

 忘れもしない。「渡辺二郎 vs 権順天」戦の夜。

 雨だったよ。仕事場から自宅アパートまで裏道ぬけ道を駆使して20分。一応留守録画はしてあったが、見られるものならリアルタイムがいい。急いだ、といったって、トツバイじゃ知れてる。それでも数少ない赤信号が恨めしい。いつか試合の展開を考えていた。

 権順天なんて名前からして、権は頭から突っ込んでくるだろう、かわしてショートの左フックがうまい具合にチンに入って、権は手をつくかもしれない、立ち上がったところへコンビネーション、しながら、もう一度左フックを打ち込む瞬間をさがす、いや、いきなりバッティングで渡辺流血、足でかわすのが精一杯、クリーンヒットはなくても前半ペースを握られて、はためには苦しい、中盤、ハラが効いてきて、ようやく渡辺本来のリズムで、終盤勝負か。KO決着がなければ今頃は4R、5Rあたりだろう。

 てなこと夢想しながら走ったのは、ほんの少しの時間だろうに、気がつくと直角に近い右カーブが目前にある。慣れた裏道、左はガードレール、その向こうに野菜畑、右は資材置場のトタン塀。カーブの地点はぼんやり明るいが、手前の街灯がひとつ消えていた。カーブミラーには、幸い、光なし。昼間だってひとけのある道じゃない。

 けど、どっちみち曲がりきる速度におとすことはもうできない。転倒必至だが急ブレーキでの転倒は、どんなざまになるか予測不能。短くキュッ、キュッ、ニ三度ブレーキ踏んで、カーブに入る。しゃあない、右にハンドルきったところで無残にこけた。どうやって倒れたか、その痛みとともに覚えていないが、後輪がむなしくまわっていた。

 アパートに戻ったところで、その夜たずねてきた友人と鉢合わせの恰好。お前どうしたんだと言われて、雨合羽の左半身が泥だらけなのに気づいた。

 考えごとや居眠りがあるから、クルマはある程度緊張して運転するんだが、まさかバイクでこんなことになるなんて、誰もとりあっちゃくれまい。翌日もそこを通ったら小さなお地蔵さんが三つならんでるのを見つけた。

 その後少しは注意するようにしているけど、環境がいくらか変わっても、心境にさしたる変化はない。

 移動の手段はバイク。嵐の晩だってへいちゃら。

 街にクルマをだしたって、いらつくのが関の山。気をひこうって女もいない、青さもない。電車やバスは乗りつけないと…。

[2003/09/24 記]



ご意見、ご感想はこちら
トップに戻る