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■酔田振男の酔いどれ前のひとりごと■

〜『酔いどれオマージュ』をなんとなく書いた男の、ちょっとだけマジメなひとりごと…〜

vol.7 親父


 野球が好きだった。

 親父にせがんで観戦に行った。東京球場という、いったいどこにあったのか今となってはさっぱりわからない、消滅してしまった球場。サンフランシスコ・ジャイアンツと巨人の試合で、王貞治が先制と、たぶんサヨナラ、2本のホームランを打った。

 球場に入るとき、親父は、そっちじゃ巨人が見られないぞと言って、一塁側へ行くつもりだったようだが、こましゃくれたガキは三塁側を選んだ。そのときのサンフランシスコ・ジャイアンツは3Mトリオといって、メイズ、マッコービー、マリシャルという三本の柱があった。3番を打つメイズはのちに殿堂入りした。マッコービーは四番、マリシャルはたしか七色の魔球を投げるという触れ込みの右腕だった。いちばんのめあてはマリシャルだったが、この日登板はなかった。

 親父はひそかな巨人ファンで、けれども同居の祖父が猛烈なアンチ巨人なものだから、家では声をたてずに野球中継を見ていた。せっかく見にいったあの試合くらいは一塁側へ坐りたかったんだろうな。無口なわりに結構ミーハーなところがあったと思う。

 親父にせっついて出掛けたのはこの野球観戦と、それから、上野のアメヤ横丁、このニへん。バナナの叩き売りをやっていて、食いたいかって訊くから、べつだん食いたいとも思わなかったけれど、あいまいに、うん、て応えたら、一房買ってくれた。裏通りの屋台で牛めし食って、うまいかって訊くから、あいまいに、うん、て応えたら、嬉しそうな顔したっけ。

 覚えているのは小林対西城の試合で、小林が勝ったとき、引分けだ、と言ってちょっと怒った様子だったこと。あ、親父は西城が好きなんだとわかった。

 本当はどっちが勝ったか強かったか、よくわからない、ガキの頃の話。

 インターネットで検索したら「東京球場」があった。跡地は荒川総合スポーツセンターになっている。オリオンズのホームグラウンドだったことで思いだしたが、さきのサンフランシスコ・ジャイアンツのトップ・バッターでスイッチヒッターだった選手が、たぶんロッテに入団したはず。来日時、日本で大いに評判だったが1年か2年で帰ってしまったようだ。あの選手の名前がでてこない。

[2003/09/03 記]



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