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■酔田振男の酔いどれ前のひとりごと■

〜『酔いどれオマージュ』をなんとなく書いた男の、ちょっとだけマジメなひとりごと…〜

vol.6 だけどファイティング原田は好きだった


 ある御婦人の言葉です。

 ファイティング原田が好きということだけで、年齢そのほかもろもろの穿鑿(せんさく)はやめましょう。

 コーナーポストに強いバネが仕込まれていて、ゴングと同時に原田ははじかれて、リング中央にとびだしてゆく。勢いあまって相手コーナーまで行ってしまうこともある。そして間断ないラッシュ、ラッシュ。好きになりますね。見ていて気持がいい。

 あれだけ前へ出て、まともにパンチをもらうことが少ないのは、巧みなヘッドスリップじゃなくて、微妙なアゴの引き加減があるのじゃないかと思いました。(「それをヘッドスリップと言うんじゃ」「そうですか」)

 間一髪パンチをかわすのではなく、パンチをすべらせてしまうナチュラルな感覚を持っていたんじゃないか。ぐいぐい入ってくるフリオ・セサール・チャベスのボクシングにも似たようなものを感じていました。その感覚が鈍ったとき、正面からパンチを受けてしまい、ふたりとも尻餅をついてしまったんじゃないか。


イラスト提供/佐野文二郎
 技術論は任ではないのでやめましょう。

 それより、そうです、御婦人の言葉です。

 だけどファイティング原田は好きだった。

 日本語としておかしいですよね。「だけど」が余計です。「ファイティング原田は」の「は」も「が」のほうがよさそうです。

 そうです、口には出さないセリフが隠れています。

 御婦人の心の声まで含めて書いてみましょう。

 ボクシングのどこが面白いんだろ、そんなものに目の色変えるヒマがあったら何かひとさまの役に立つことでもしようという気にならなかったもんかね、ボクシングなんて興味ない、好きでもない、だけどファイティング原田は好きだった。

 と、まあ、こんなところでしょう。捏造ではありません。わかります。なぜなら、ごめんなさい、御婦人というのは、我がおふくろのことです。

 時代が違うといってしまえばそれまでですが、ファイティング原田は大衆を惹きつけるボクサーでした。

[2003/08/27 記]



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