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■酔田振男の酔いどれ前のひとりごと■

〜『酔いどれオマージュ』をなんとなく書いた男の、ちょっとだけマジメなひとりごと…〜

vol.4 いったいどれだけの人が


 ウィルフレド・ゴメスは、日本にもきた。ロイヤル小林の挑戦を一蹴した。

 その頃は連続KO記録をうちたてるなんて、思いもよらなかったから、“あのゴメスがやってきた”なんていう空気はなかった。

 突進する小林。「KO仕掛人」…なんてうまいネーミングだ。さがるゴメス。このときはまだKOキングの称号はない。仕掛人は、なおも前へ前へ。次の瞬間ばったりのめる仕掛人。もう目は死んでいる。

 あの頃のゴメスは足をとめてパンチをねじ込むスタイルじゃなかった。軽やかだった。

 フットワークとかボディワークとか、そういう横文字じゃなくて、身のこなし、と言いたい。素晴らしかった。人間はかくもしなやかに動くことが出来るのか。動く相手はもとより、自分が動くことにより相手も動く。動けば形がかわる。隙間ができる。そこを打ち抜く。

 経験を積むと無駄な動きを省くようになるから、必要以上に足を使わなくなるという、うがった考えはある。学習効果。でもね、ボクシングだけじゃないけれど、いろんな物事は、時に、善悪よりも美醜で見たい。

 ロベルト・デュランの背中を見ながら、常にKOを目指し実践したゴメス。いったいどれだけの人がスリリングな思いで君を見たことか。

 試合そのものも面白かったけれど、とにかくカルロス・サラテ戦あたりまでのあの身のこなしにはほれぼれした。

[2003/08/13 記]



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