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ガウンやトランクスは目も眩むほどの多色使いでありながら、木村登勇には「黄色」のイメージがある。試合や練習のときの格好について聞いてみた。 「ぼくにとって、黄色と赤がメインの色ですね。赤は『勝利の色』で、黄色はいちばん好きな色。ガウンやトランクスにもそれが出ていますよね。自分でデザインするというのはないですけど、いつもデザイナーさんにイメージを伝えて作ってもらってます。シューズだけは履き馴染んだものじゃないと動きにくいので、毎回同じです。 流行を追いかけるのではなく、自分が心地よいと思うものを選ぶ。それは普段、たとえば洋服を買いに行ったりするときもそうだという。最近、木村は愛車(ビッグスクーター)の改造にはまっているという。 「バイク雑誌見たりして、パーツ買いに行って。ただ、雑誌に出てくるバイクのスタイリングには関心がなくて、パーツの写真見て、『これをあの辺につけたらカッコいいよな』なんて考えながらやってます」 「ああ、これねえ。お姉ちゃんがやってるんですよ。それを見よう見真似でやってみました。結構いろいろ描いているんですよ。(脇を通りかかったトレーナーを見て)ジェスティー(横浜光ジムトレーナー。このジムにはもうひとり、サイラス氏と併せて黒人トレーナーが2人いるのだ)にもやってあげたんですよ。 趣味の話からも、誰にも似ていないオリジナルのファイティング・スタイルの一端が垣間見えた気がした。マニュアルとか、流行といったものをあてにしない。ほしいものは自分で見つけ、作り上げていけばいい。それは私生活もボクシングもいっしょなのだという思想。それが木村登勇の生き方なのだろう。そうかといって「自分流」に凝り固まったような、過剰な自意識を感じるわけでもない。 「あの、青森県人気質ってぼくにはよく分かりません。意識したこともないんです。ただ、ぼくが生まれた三沢市って基地の街だから、米軍の軍人もけっこういるんです。白人も黒人も…、それこそいろんな人種が。そういうなかで育ってきたからかも知れないけど、他人がどうだから自分はどうしようみたいなのがないんですよ。みんな違うのって当たりまえでしょう」 「試合終わると、2週間くらい休むんですよ。南の方に旅行に行くことが多いんですけど、日本人っていうだけで、実際にはそうじゃなくても金持ちだと思われることってありますよね。それでヒヤッとする目に遭ったり…。前にね、ハワイででっかい黒人に絡まれたことがあったんですよ。たぶん、なにかの売人でしょうね。で、ぼくの財布取って。こっちは返してもらいたいけど力づくじゃ勝てなさそうなでかいヤツらでしょう。だからずっと、押し問答するふりしながら様子見て『どっかでスキができるだろう』って。ちゃんと財布は取り返しました。 これまでおぼろげながら、木村術の輪郭が見えてきたような気がしていたのだが、最後のピースがはまったような気がした。一見、不可思議に見える木村登勇のボクシングには、特別な事柄は何もない。 勝つために必要な準備とその実行、及びそれを支える冷静な思考。 ただこれだけだ。身も蓋もない言い方をすれば、誰もがやっていることを彼もやっているに過ぎない。ただ、過剰な自意識がない分、型にとらわれない動きを見せることができるというのが大きいのだろう。 そう、あなたにも木村術は真似できるのだ。さあ、今すぐボクシング関連の本やビデオを捨てよう。そしてあしたの練習からは、一切の指示を無視して気の向くままに動いてみよう! きっと、トレーナーに怒られます。 (おしまい) [2005/06/03 記] 協力;横浜光ボクシングジム
練習のときの道具は、いろいろですね。緑だったり黒だったり…。最近気に入って使っているのも赤と黄色のツートン・カラーのグローブだし。使ってるグローブが古くなると買い換えるんだけど、前と同じ色にならないようにはしています。誰が使っているからとか、そういうのはなくて、あくまで自分のフィーリングで選んでいます」
我々はふと木村の手許を見た。小指の爪にネイルアートを施している…。
でも、絵を描くことは別に好きじゃなかったです。全然描かないですよ。それからプラモデルみたいなのも全然作らなかった。説明書読んでモノ作るのは好きじゃないんですよ。自分で発想して、ゼロから作り上げていくのが好きなんです。バイクの改造もそうだけど、基本的に全部カスタムです。そういえば、ボクシングもカスタムですね。あ、いいですね『全部カスタム』。今度トランクスにも入れようかな『カスタム』って(笑)」
そういう風だから、たとえば「次の相手は黒人だぞ」と言われても「別に何とも…」なのだという。考えることは「誰が相手だろうと、勝つためにどうするか考え、工夫するのみ」なのだ。その際に大切なことは「切れない」ことだという。
そこで切れちゃダメなんですよね。頭だけは常に冷静。そうじゃないと考えられないですから。試合のときも、そうなんでしょうねー。終わってから取材で『あのラウンドのあの攻防について』みたいなこと聞かれてもわからないんですけど、そのときは考えて対処してるんですよ。ただ、それがギリギリのところの攻防だったりするから。だから、試合終わると緊張感が解けて全部忘れちゃうのかも知れませんね(笑)」
special thanks;Yokohama Hikari Boxing Gym