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2階級制覇を成し遂げ現在3度の防衛中の木村登勇だが、ライト級チャンピオン時代は決してハッピーなものではなかったようだ。 「体重を(ライト級リミットの135ポンド≒61.2キロまで)落とすことで精一杯で…。勝つためじゃなくて、ウェートを落とすための練習しかできませんでした。スーパーライト級(リミット140ポンド≒63.5キロ)との差は2キロちょっとですけど、これが大きかったんですね。いまは試合のための練習ができるから、ボクシングが楽しくて仕方ないんですよ。 ウェート調整の苦しみから解放されるというのは、大きなメリットかも知れない。しかし、重くなるのは自分だけじゃない。そしいて、相手のパンチ力も増すのではないか。 「えっと、それは感じないんですよ。ライト級時代に戦った湯場(忠志=現日本ウェルター級チャンピオン。木村に1勝1引分)は、ホントにパンチありましたけど…。致命的なパンチをもらってないというのも、あると思います。ウェルター級に上げて湯場とやりたいか? それはないです。誰とやりたいっていうのがないんです。決まった相手とやるのが仕事だから」 「ぼく、基本的にビデオ見ないんですよ。テレビもほとんど見ないですからね。試合が決まったら少しは見ますけど。海外の選手のビデオを見て研究するなんてことも、ないんです。だから、『好きな選手は?』とか『目標にする選手は?』って聞かれても答えられないんです。知らないんですよ(笑)」 ということはこの間の防衛戦で戦った、佐々木基樹のビデオも…。 「いや、少しは見ましたよ。でもああいう(頭から突っ込んでくる)のは予想してませんでした。佐々木さんとは前にスパーやってて、ああいうのじゃなくて普通にボクシングしてたんですよ。実際、試合が始まったら1ラウンドでダウン取ってるし、これは早く終わるかなと。佐々木さんもダウンしてから戦法変えたんじゃないですか? だからちょっとしんどかったですね。 次戦は8月にシャイアンジムの大嶋宏成の挑戦を受けることが決まっている。ありきたりだが、その後、将来の目標を訊ねると…。 「ボクシングやってる以上はもちろん世界チャンピオンなんですけど、いつやりたいとか早くやりたいっていうのはないです。それよりも、決まった試合一つひとつを勝っていくことですね。体が動く限り、そうやってボクシングを続けていきたいと思っています」 金昌龍トレーナーを相手にしたミット打ちは、基本を重視したものだった。しかし、ジムの練習生を相手にしたマスボクシングで見せた動きは、次の相手を意識しているように見えた。こうやって一戦一戦、決められた相手に勝つためのボクシングを構築し、試合に挑むという過程を続けていくのが木村登勇にとってのボクシングなのだろうか。だとすると、目指すボクシングスタイルの完成形というものはどうなるのだろうか。 「わかんないですね(笑)。どうなるんでしょうねー。こういうスタイルっていうのもないし、だから磨いてるコンビネーションとかもないですしねえ。基本は『空いてるところを打つ』ことだと思ってます。だからよく『変な体勢から打つ』って言われたりしますけど(笑)、そういう意識はないんですよ」 この人のボクシングについて書かれた記事で、よく見かける言葉に「木村術とは自分で考えること」というのがある。その前提にあるのは極めてシンプルな原則なのではないか。「空いているところを打つ」という。言ってみればどちらも「当たり前」のことだ。それがなかなか思うようにいかないから、みんな苦労しているし、だからボクシングは面白いのだと思う。その、当たり前のことを当たり前にやるためにどうすればいいかを突き詰めた結果、あの、ある種特異な戦い方になっているのだろうなと感じた。だとすれば、この人が自分のボクシングを存分に発揮できる相手は1人しかいない。 「自分と試合、ですか。やってみたいかも知れない(爆笑)。どうなるかって? いやー、わからないですねえ、ぜんぜん想像つかないです」 …と、ここまで書いて気がついた。前回の締めで私は「次回はまた脇道へと逸れていく予定なので、お見逃しなく」と書いた。逸れてないじゃん! すみません。次回(最終回)に持ち越しってことで。 (もう1回続く) [2005/05/29 記] 協力;横浜光ボクシングジム
いまの体重ですか? 大体71〜72キロくらいですね。あ、だから決していまも楽なわけじゃないんですよ。でもウェルター級に上げたいとは思わないですね。そうすると今度はグローブが大きくなっちゃうんで(スーパーライト級までは8オンス≒約226.8グラム、ウェルター級からは10オンス≒283.5グラム)。そうなると、スリルがなくなっちゃう。スピード、パワー、スリル…。ボクシングがいちばん楽しめるのが、スーパーライト級なんじゃないかと思っています」
それでも、OPBFチャンピオンとか、近い将来戦うかも知れない相手のビデオを見たりすれば「この選手と戦いたい」と思うのではないだろうか。
2004年12月4日、五百久寛行(不二)戦
ぼくも同じようにやるっていうのは、やろうと思えばできるんだけど。でも、チャンピオンがそれをやっちゃいけないと思うんで…。頭は痛かったです。もう早く終わんないかなあって、そればっか考えてました。試合終わったときは、『やっと終わった』って(笑)。判定のことまで考えてなかった。次やったら? それはもう、対応できますよ。でもいまは次の試合のことしか考えていません」
special thanks;Yokohama Hikari Boxing Gym