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トシオカ☆ニシアキの【Special Ring Side】

〜時には取材者のように!?・海外ファイト[ビデオ]観戦記〜

=July 16, 2005=
--vol.10-- Jermain Taylor vs. Bernard Hopkins
=MGM Grand, Las Vegas, NV=

 8月4日、小林生人(横浜光)が金井晶聡(姫路木下)相手に演じた“番狂わせ”は、小林に近い筋の人間にとっても驚きだったようだ。この日のメイン終了後、立ち話をしているときのこと・・・。

「地方競馬でどんなに勝ち続けていても、中央でなかなか勝てないのといっしょだな」

 そんな感想をもらした知人がいた。私は、小林サイドは1月の榎洋之(角海老宝石)とのタイトルマッチを見て、この試合を決めたのではないか、と思った。小林の下から突き上げるようなジャブがことごとくヒットしたのは、榎が実行した戦術そのものだ。そして、右オーバーハンドやインサイドからのアッパーのヒット率の高さは、金井のディフェンスの甘さを読んだうえでのものではなかっただろうか。

 金井は榎に負けるまで14連続KO勝ちを記録していたのは、皆さんの記憶にも新しいだろう。これはデビュー以来のものとしては日本記録だ。そして、榎戦には浜田剛史氏(元WBC世界ジュニアウェルター級王者/帝拳)の持つ15連続KO勝利の日本記録がかけられていた。

 当然、この試合で注目を集めたのは「記録達成なるか」という点だった。しかし、金井の記録達成を願うものは「身内」以外には、あまりいなかったのではないか。

「記録を作るのはおまえじゃない」

 あんまりといえば、あんまりな言い方だが実際のところ、「民意」を端的に表しているのはこれに尽きるのではないか。その少し前、丸山大輔(筑豊)が記録したデビュー依頼13連続KO勝利の日本記録(当時)しかり、世の中には「歓迎されざる記録達成」というものが、確かに存在するのだ。

 その一方で、途切れてしまったときに何ともいえない虚脱感に包まれる、記録への挑戦もある。それは「誰が止めるのか」というのとともに、世間を巻き込んでいく。

 古くはプロ野球・読売のV9(止めたのは中日)、社会人ラグビー・新日鉄釜石のV7(同・神戸製鋼)、大相撲・千代の富士の53連勝(同・大乃国)などなど。ファンとアンチ、双方を巻き込んで社会現象になっていった。そして「祭りのあと」には、何ともいえぬ気だるい感じがやってくる…。あたかも、ひとつの時代が終わってしまったかのような、そんな気分になった経験は、読者諸兄にもあることだろう。

 日本ボクシング界でいえば具志堅用高(元WBAジュニアフライ級王者/協栄)が、V14をかけた郷里・沖縄のリングで冴えない顔と戦績のメキシカン、ペドロ・フローレスに乱打された日がまさにそれだ。

 その逆に、記録を止めることに対して多大な期待がかけられる場合はどうだろう。


ホプキンス(右)は「強いだけ」なのが弱点?
 大橋秀行(元WBA&WBCストロー級王者/ヨネクラ)が、韓国の崔漸煥を悶絶させ、日本勢の世界挑戦連続失敗記録を21で止めた、後楽園ホールの興奮。新しいところでは長谷川穂積(千里馬神戸)がウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)を下し、WBCバンタム級の王座を6年半ぶりに取り返した日本武道館・・・。

 期待と諦観とがないまぜになったまま臨み、試合が進むに連れて高まっていく期待感。止まった瞬間のカタルシスは、筆舌につくし難いものがある。少し大げさかもしれないが。

 バーナード・ホプキンスの記録は、「地方競馬での連勝」などでは断じてない。防衛20回の道程には史上初の4団体統一という偉業も含まれる。対戦相手もグレンコフ・ジョンソン、サイモン・ブラウン、ウィリアム・ジョッピー、そしてフェリックス・トリニダードにオスカー・デラホーヤ、などなど。まさに「質も量も兼ね備えた」偉業である。

 今回の試合、言ってみれば「偉大な王者にホープが挑む一戦」である。にもかかわらず私、トシオカ的にはまるで気分が盛り上がらなかった。そして、試合中も、転落の瞬間にも胸が躍ることは、なかった。なぜだろう。


僅差ながら偉大な王者を止めたテーラー(左)は、強さ以外のプラスアルファを兼ねた偉大さをモノにできるか…?
 これはひとえに、ホプキンスの資質によるのではないか。

 確かに、強い。技術的にも確かなものがあり、「負けない」試合をすることができる。“The Executioner(死刑執行人)”という広く知られたニックネームのとおり、パンチ力もある。20度の防衛戦中、12をKOで片づけている。それでも大概、試合はつまらない。今回も、記録を軸にして試合を見ていたのでなければ、途中で寝ていただろう。いや、実際にはいつもの通り眠ってしまったのだが。

 品、格、色気、オーラ…。見るものを非日常へと誘(いざな)う、強さ云々を別にした“プラスアルファ”が、この選手には決定的に欠けているのだ。皆無といってもいい。「スマートさ」を「狡猾さ」と取られてしまうような、決定的な魅力の欠如。これがバーナード・ホプキンス、最大の弱点ではないだろうか。

 記録ストップのカタルシスも虚脱感もなく、試合が終われば人々はただ黙ってテレビを消し日常へと戻っていく。そして偉大であるはずの記録も、それを止めた者の偉業さえも、レコードブック上の一点の「シミ」として後世に残される…。

 12月に再戦の予定らしいが、誰よりも強く、しかし誰にも夢を与えることのできない「最強の男」のキャリアは、どういう幕引きへと向かっているのか。

[2005.8.10 記]



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