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その夜、帰宅後にTVのスイッチを入れると、いまだかつて目撃したことのない想像を絶する光景が、生中継で画面に映し出されていた。ニューヨークのワールド・トレード・センターが炎上していたのである。その後の悲しい出来事は、改めて記さなくても皆さんご存知だと思う。 翌日、旅行代理店に電話するも、すでに他の客の対応に追われていてパニック状態。ニューヨークでは空港も閉鎖され、予約のキャンセルは必然であった。結局、15日に行われるはずだった試合は、29日に延期開催されることになり、日をおいて改めて渡米したのだった。 アメリカに無事着くと、まずはMLB「ヤンキース vs オリオールズ」を観るためにヤンキースタジアムへと向かった。しかし、テロ後の警備はとんでもなく厳重で、バッグ等を持ったままの自分と、一緒に行った友人は入場を拒否され、8ドルで買った入場券はパァーとなってしまった。 メインで雌雄を決する両者は対称的であった。警官の帽子をかぶり、両手には星条旗の小旗を持つプエルトリコのヒーロー、WBAチャンピオンのフェリックス・トリニダード。対するは「エクスキューショナー(死刑執行人)」の異名を持ち、いつにも増してただならぬ不穏な空気をはらんだWBC、IBFチャンピオン、ヒール役に徹するバーナード・ホプキンス。 厳粛なムードの中、国歌斉唱ののちに始まった試合は、ヒール役であったホプキンスによって、最終12ラウンドに終止符が打たれた。戦前の予想で有利と思われていたトリニダードは、アゴに喰ったパンチにより完全に足にきていた。ホプキンスの完勝であった。一緒に来ていた友人は、ファンであるトリニダードの敗北によるショックで失意のうちに翌日、自分より一足先に帰国した。 あの「9.11」以降、世界は一変した。最初の出発予定直前に見たあのTV映像は、一生忘れることはないだろう。あらためて、犠牲になってしまった方々のご冥福をお祈りします。
当初行く予定ではなかったが、7、8月のトラブルによる心の空白を埋めるべく、渡米の決意に至った。9月に入り、順調に出発2日前をむかえていた。
そして今回の試合会場、マディソン・スクエア・ガーデンに行くと、客の熱気とはウラハラに、当然のごとくここも警備が厳重でピリピリしていた(その日の前座では、5カ月前に南アフリカで見たZ・ペテロが出場していたっけ…)。