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ポートランド経由でニューヨークJFK空港に到着したのは、夜遅くだった。その時間に地下鉄を利用するのは怖かったので、空港バスでマンハッタンのバスターミナルまで行った。 その車中、空港のバス停で一緒になった女性と話しながら、不安解消に努めた。彼女はポーランドに留学中で、ワシントンDCに住んでいる友達とバスターミナルで待ち合わせているとの事だった。しかし予定していたフライトに間に合わず、一便遅くなってしまったので友達と再会できるのかと不安な胸中だったようだ。 自分より彼女の方が厳しい状況だったようなので、待ち合わせ場所まで付き合うことにした。探すまでもなく、そこには誰もいず、落胆した。とりあえず周辺を回ったが同じだった。宿泊予定のホテルに行ったらどうかと聞いたが、友達と一緒にチェックインする予定だったので聞いていないとのことだった。 若い女性が、夜11時半にもなろうかというこのニューヨークで何と不用心かと思った。自分でさえ、万が一のための次の手段はあらかじめ準備するが、この状況ではあまりに彼女が可哀想なので黙っていた。しばらく歩き回り、待ったりしたがダメだった。そこでもう一度待ち合わせ場所へ行って会えなければ、とりあえずその夜は自分が予定していたユースホステルに泊まるという提案に合意してくれた。不安な足どりで行ってみると2人の女性が待っていた。まさに彼女の友達だったのだ。再会した途端、3人とも泣き始めた。 待っていた二人の彼女たちの話しによると、最初の予定時間に来なかったので次のフライトを調べ、一度ホテルに戻り、バスターミナルに着く時間を見計らって今来た、とのことだった。彼女たちが再会できて安心はしたが、もう零時も過ぎて予約もとっていない自分の方がこんどは不安になる番だった。 彼女たちのホテルはそこからすぐ近くだったが、料金が高すぎたので自分はタクシーでユースに向かった。部屋に案内され長時間の移動と、彼女達の件で疲れていたのですぐに寝てしまった。 翌朝、誰かが部屋から出かけていく物音で目が覚めた。しばらくそのままベッドに横になっていると下のベッドから女性の声が聞こえたので驚いた。スタッフに案内されたにも関わらず、自分では部屋を間違えたのかと思ったほどだ。 無用なトラブル回避と思い、彼女たちが出かけるまで寝ていた。表に出ると、今、外出したばかりの日本人らしき旅行者が目に入ったので声をかけてみると、ミッドタウンで開かれているバザーに行くところだと教えてくれた。試合は夜。時間があったので、同行させてもらった。 彼は数日前にチェックしていたシャツがあり、改めて購入しに行くところとの事だった。そこで自分も適当にハンガーにかかった服を見ているとたまたま「TVKO」と入ったジャンパーを発見した。何と「ホリフィールドvsフォアマン」戦の時のものだった。自分で勝手に貴重そうだと決めつけて、結局20ドルで買ってしまった。反対に彼がチェックしていたシャツは既に売りきれてしまったようだった。 夕方、試合のため、別れる前に彼の予定を聞くと翌日、日本への帰国便が同じだったのだ。偶然とは不思議なものだ。 メーンイベントが近づくにつれ、以前の「タイソンvsホリフィールド」第1戦の雰囲気を思い出した。ゴングが鳴る前、ゾクゾクしたものだ。しかし緊張したのはそこまでで、試合自体は退屈で、結果も引き分けという期待外れのものだった。 納得いかないまま、客の流れに紛れて歩いていると、前の人達がみんな左上の方を見上げていたので何があるのかと思うと、俳優ジャック・ニコルソンが仁王立ちしていたのだ。以前、ラスベガスからのフライトでマジック・ジョンソンと同じ(とはいってもあっちは当然ファーストクラス)になったことはあるが、今回も驚いた。 試合後、夜12時半を過ぎていたと思うが、その夜は勇気を出してというより無謀だったが地下鉄を利用して帰った。神経過敏になっていたおかげで、ユースの最寄駅は深夜は工事のために通過することが分かった。ユースまで少なくとも十数ブロックぐらい歩かねばならなかった。 キョロキョロせず、とにかく足早に歩いた。2時間寝た後、翌朝4時半頃地下鉄の駅に向かった。フライトが早い時間だったので早め早めの行動だった。プラットホームには2、3人しかおらず、不安とともに電車は待ったがなかなか来なかった。こういう時の時間は本当に長く感じるものだ。バスターミナルでは同じく空港へ行くアメリカ人と一緒にバス停探し回った。夜が明け始め、窓の外を眺めていると、あるモーテルが目に入った。98年6月に「ホリフィールドvsアキンワンデ」戦中止のFAXを受け取った、思い出したくないモーテルだった。でもなぜか懐かしかった。 空港でチェックイン後、ゲートへ行くと、バザーに連れて行ってくれた彼がイスで寝ていた。前夜空港に来ていたそうだ。結局彼とは池袋駅まで一緒だった。あの時玄関で話しかけていなければこうもなっていなかったのを思うと、旅の不思議な偶然を感じる…。
いよいよ統一戦という期待で入場ゲートの列に並んでいた。すると自分の数人前に日本からの新婚旅行らしき人に気がついた。ところがその人たちのところで進まなくなった。チケットをセンサーに近づけて全員確認を受けていたのだが、その後その2人は別のところに連れて行かれた。多分ブローカーから手に入れただろうそのチケットは、きっと偽物だったのだと思う。そういう現場を見た直後で不安だったが、無事にゲートを通過できた。