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ある朝、通勤途中の銀座線の中で、スポーツ新聞を広げてみると、「デラホーヤ戦延期」の記事が目に入った。一瞬、古新聞かと錯覚し、日付を確認したほどだったが、無情にもその日のものだった。前日に航空券を申し込んだばかりか、1ヶ月を切っていたので、キャンセルチャージの対象に入っていた。またか…と、裏切られた気持ちだった。 去年5月にフランスのニースからパリまで一晩寝台列車で共に過ごした、ローラだった。年賀状で2月12日にロサンゼルスへ行く予定と書いて送ったので、空港まで迎えに来てくれるとのことだった。それ以外の事は残念ながら理解できなかった。 ロサンゼルス空港の国際線ターミナルで待っていると、8ヶ月ぶりのローラが姿を見せた。フランスで見せてもらった写真のアレックスと一緒だった。海岸線を北へドライブ中、その近辺で大火災があったことや、その他の出来事を説明してくれたようだった。 最初に行ったのは、今や自分でも知ってる「スターバックス」だった。この当時「スタバ」を知らなかった自分にローラが全米チェーンの店と教えてくれた。 ローラ達の家は山合いの木立に囲まれた静かな場所にあった。車が家に近づくと、2匹の全身黒の犬が吠えていた。家の中を案内してもらい、最後にアレックスの部屋へ連れて行ってくれた。きちんと整理された部屋の一角にミニカーがたくさん並べてあった。昼食をとりにショッピングモールへ行き、その後、娘のクローイが通っている学校へ案内してくれ、アメリカの実生活を体験したような気がした。 教室内では日本人の自分をみんながまじまじと見ていたのを覚えている。その時初めて会ったクローイが、今授業で作っていたというバレンタインカードをプレゼントしてくれた。ちょっと嬉しかった。 その後ローラの気遣いで、家で数時間夕方まで眠らせてくれたお陰で時差ボケも楽になった。夜は声優をしているローラの前夫のいるスタジオへ一緒に行った。 その週末はアレックス、クローイともに父親と過ごすこと、ローラとバートはディナーに自分に付き合ってくれる予定だった店に予約を入れてあったようだが、バートの仕事が長引き、結局キャンセルして、ローラと2人で寿司を食べに行った。家に着くと仕事の終ったバートが待っていた。精一杯のカタコト英語で話していたような気がする。 翌朝、2人が空港まで送ってくれた。今まで一人で旅行してる時、ゲートで待ち合わせていた家族が抱ようする場面を何度となく見てきたが、まさかアメリカで自分がローラ達と抱ようを交わし別れるとは思わなかった。映画でした見ることの無かったアメリカ人の普段の生活に少しでも触れる事の出来た、貴重な思い出である。 今回のラスベガスで変化したのが、いつものホテル「キング8」から安いダウンタウンのモーテルに泊まったことだ。「ダウンタウナーモーテル」は空港からバス約40分ぐらい。UNLVのトーマス&マック・センターの近くを通るバスである。 そうそう、肝心の試合…。久々におもしろかった。両者ダウンありの接戦で、最終ラウンド、スコアで負けていると判断したデラ・ホーヤが、猛ラッシュして判定で勝利するという好ファイトだった。 ロサンゼルスからの帰国便の窓から見える街並を見ながら、ローラ達の家はあのあたりだったろうかと探したものだ。ミッキーマウスのサインの入った帽子、いつもクロスワードパズルをしていたアレックス。全身ナイキで固めた、ガーフィールド好きのクローイ。そしてローラとバート、今はどうしているかな…。
そして新しく決定した日が2月13日だったのだ。出発の一週間くらい前の深夜電話がかかってきた。不機嫌に出てみると、何を言っているのかよく分からなかった。英語だったので驚いた。